こんにちは。
千葉県と茨城県でフィジカルトレーナー、スイミングコーチとして活動している宮城です。
前回「泳げないスイマーが今やるべき3つのトレーニング」 でお伝えした内容を1つずつ解説していきたいと思います。
今回はエネルギー代謝系のトレーニングです。
無酸素性運動
酸素を使わないでエネルギーを作り出すので無酸素性と言われてます。
ただ決して運動中に呼吸を止めているわけではありません!また実際には酸素を全く使わないわけではないので無酸素性運動というネーミングも??なのかもしれません。
では主に何を使ってエネルギーを作り出すかというと、食べたものを消化吸収してできたATP(アデノシン三リン酸)というリン酸化合物や糖(血中グルコースや筋グリコーゲンなど)からエネルギーを作り出します。
ATPを使ってエネルギーを供給するシステムをフォスファゲン系、糖を使うシステムを解糖系と呼びます。
フォスファゲン系はエネルギーを供給するスピードが速いので、非常に強度が高く短時間(5~10秒)で疲労困憊になるような運動でエネルギー供給のメインとなります。
ただATPは体内に貯蔵されている量が少ないのですぐに使い尽くされてしまいます。
一方で解糖系はフォスファゲン系を引く継ぐような形でエネルギー供給の割合が高まります。このシステムはフォスファゲン系に比べ長い時間(120秒くらい)の運動の際にメインでエネルギー供給を行います。
特徴としてはエネルギーと同時に乳酸が作り出されます。
乳酸といえば疲労物質の代表!みたいに思われがちですが実際はそうではなく、疲労にはその他の要因も多く関係していますし、乳酸はのちにエネルギー源としても使われます。その点も覚えておくといいと思います。
*運動時間に対するエネルギー供給の割合を示すグラフ
どんなトレーニングをすればいい?
仕組みの話はこれくらいにして、具体的にどんなトレーニングをすればいいのかお伝えします。
🔹ジャンプ&坂道ダッシュ
これは先ほどお伝えしたフォスファゲン系に的を絞ったトレーニングです。
水泳でいうとダイブから15〜25mくらいまでのスプリント能力を鍛えます。
《 ポイント 》
・水泳はスタート台や壁を蹴ってスタートするので、まずは垂直跳びをしましょう。可能であれば空中姿勢でストリームラインを。またスプリットスタンス(足を前後)でジャンプしてもOK!
・着地に注意!普段トレーニングをしていないスイマーはケガをしやすいので、慌てて走り出さずにまずはしっかり着地しましょう。
・坂道を利用することでお尻、もも裏、ふくらはぎの筋肉をしっかり使うことができます。また、陸での運動に慣れていないスイマーのケガや極端な筋肉痛防止にもなるので上り坂はオススメです。
・ダッシュと休憩(歩いて戻る時間)の配分は1:4から1:5くらいに設定しましょう。(15秒ダッシュであれば休憩は60〜75秒)坂道でなければ歩いて戻らずにその場で完全休憩が良いのですが、今回は坂道ダッシュなので歩いて戻りながら休憩なので少し休憩時間を長めに設定しました。
・まずは5〜8setぐらいからスタートして徐々に増やしてください。頻度は他のトレーニングとの兼ね合いもあると思うので週2〜3回が目安です。
🔹レースペース・インターバル
こちらは解糖系のトレーニングです。水泳だと50mまたは100mのレース時間と考えてください。
そのレース時間の間、速い動きを続けられるようにすることを目的とします。
《 ポイント 》
・走ることに慣れていないスイマーがアスファルトの上をたくさん走ると、やはりケガのリスクが高いので、できれば芝や土の上を走るようにしましょう。
・固定式自転車(エアロバイク)があればより安全にトレーニング可能です。
・フォスファゲン系のトレーニングより時間が長いので、ペース配分もしながら走るようにしましょう。
例)前半は全力に近いスピードだがラクに、中盤はペースやフォームを維持、そしてラストスパートはフォームやリズムが乱れやすいので注意しながら出し切る!
というような感じでレース展開をイメージするとより効果が高いです。
・このトレーニングも5〜8setぐらいからスタートして徐々に増やしてください。平地で走るので、脚への負担を考慮して頻度は週1〜2回とします。
有酸素性運動
主に酸素と脂肪を利用してエネルギーを作り出すシステムを有酸素系と言います。
フォスファゲン系や解糖系に比べ、エネルギーを作り出すまでに時間がかかるので、短時間で終わる瞬発的に大きな力を出すような動きには不向きのエネルギー供給です。
ポイントは脂肪を利用するというところで、脂肪は糖に比べて体内に貯蔵されている(体脂肪など)量がとても多いです。
ということは大量のエネルギーを長い時間供給し続けられるので、中〜低強度の運動を長時間継続するには効率の良いシステムです。
どんなトレーニングをすればいいの?
🔹LSD
これはLong Slow Distance の略で、長い距離をゆっくりとしたペースで動くというトレーニングです。
運動の方法はランニング、自転車(移動・固定)またはインラインスケートでも構いません。
LSDの目的は練習やトレーニングをするための体力作りです。
《 ポイント 》
・強度がとても大事です。強度が高すぎると長時間続けられないですし、逆に低すぎるとトレーニングにならない可能性もあります。そこで強度は心拍数を使って設定しましょう。計算式は
(220−年齢)−安静時心拍数)× 運動強度(%) + 安静時心拍数
で目標心拍数を出します。この式で出てくる運動強度(%)は、低すぎず高すぎずなので50〜80%(計算のときは0.5~0.8で)の範囲で調整して計算しましょう。
例えば30歳で安静時心拍数が70、運動強度を60%とした場合
(220−30)− 70)× 0.6 + 70 = 142
となり、運動中は目標心拍数の142を維持できる強度で行えば良いということになります!
・運動中の心拍数測定はウェアラブルデバイス(Apple Watchなど)があれば便利ですが、ない場合は6秒間心拍数を手首などで測り10を掛け算すればOKです。
・運動時間は目標心拍数を維持しながら30分以上行いましょう。なぜかというとスイム練習を考えた場合、メイン練習までのウォーミングアップやドリル練習で約2,000mを泳ぐとします。100mを1分30秒サイクルで泳ぐと仮定すると30分かかるので、30分以上は動き続けられるようにしておきましょう。
・このトレーニングも走り慣れていないスイマーが行うと怪我のリスクがありますので、走りが苦手だという方は自転車を利用することをお勧めします。
・頻度は週に1〜2回程度。プールが使えなくなって、しばらく運動をしていなかった方はダッシュやインターバルトレーニングの前にこちらから始めてください。
それぞれ運動強度や時間によって目的が変わります。ただ闇雲に走るよりは水泳の練習やレースに置き換えて考えてもらえると、モチベーションも変わり効果も大きくなるはずです。
今回の記事の中でも散々お伝えしましたが、スイマーの方は陸での運動に慣れていない方が多いので、ランニングを行う場合は十分注意して実施してください。自転車や固定式バイクを利用することも考えてもらえると良いかと思います。
最後に外での運動は国からも推奨されていますが、ソーシャルディスタンスや交通安全などにも十分配慮してトレーニングに励んでください。
プールが再開して泳げるようになった時を想像して!!
最後までお読みいただきありがとうございました。
フィジカルトレーナー / スイミングコーチ
宮城カズタカ
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